令和元年第三回定例会 決算審査委員会総括質問

令和元年第三回定例会 決算審査委員会総括質問

令和元年 平成30年度決算審査特別委員会 総括質問

令和元年 10月21日

 お早うございます。平成30年度決算特別委員会、総括質問のトップバッターを務めます、自由民主党の高森喜美子でございます。質問に先立ち、この度の台風19号の被害によりお亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げ、ご遺族と、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。一日も早い被害からの復旧を願い、私たちも応援したいと思います。

 それでは審議にはいります。 本委員会に付託されています、平成30年度東京都台東区一般会計歳入歳出決算、並びに国民健康保険事業会計歳入歳出決算、後期高齢者医療会計歳入歳出決算、介護保険会計歳入歳出決算、老人保健施設会計歳入歳出決算、病院施設会計歳入歳出決算、について自民党は認定いたします。各委員が、各会計の審議で指摘いたしました意見については区政運営や施策に反映いただきますようご留意願い、総括質問を行います。

1. 税収について

現在の財政状況の認識について

 始めに財政について、現在の財政状況の認識について伺います。平成30年度は服部区政4年間の最終年度であり、基本構想や長期総合計画を策定し「躍進台東区」実現の道筋と明るい未来を指し示すと共に、現状の課題解決に取り組んだ年でもありました。また、日本の景気は安定した政権運営の元、緩やかな好調を維持し、地域にマンションやホテルの建設が目立ち人口も増加して今年は20万人に達しました。しかしながらグローバルな経済環境は米中の経済摩擦、不安定なイラン情勢など、不確実な要素も多く経済見通しを立てにくい面があります。たとえ経済の荒波が押し寄せても、区民の負託に応える行政サービスを維持するためには、安定した財政基盤の確立が不可欠であることは言うまでもありません。平成30年度の歳入決算を見ると、特別区民税は、納税義務者数の増加などにより前年対比で約10億4千万円の増となり、6年連続の増収となりました。特別交付税も、原資となる市町村民税法人分の増などにより、約5億4千万円の増となっています。これだけを見ると、人口の増加や堅調な企業収益を反映し、区の財政は大変良好であると思われますが、ここ数年来影響を受けている国による税源の偏在是正措置は、消費税10%の段階でさらに大きくなると聞いています。ふるさと納税の影響も年々大きくなっていることも踏まえ、現在の財政状況を区長はどのように認識しているのか、お考えをお聞かせください。

基金と起債の活用について

 平成30年度は、約27億6千万円の基金の積み立てを行い、全会計で年度末の基金残高は約485億5千万円となりました。区有施設の保全や長寿命化が進み、黒門小学校のリニュアルで建物が蘇って好評です。蔵前小学校の改築も終わり学級数の増加に対応いたしました。平成30年度はこうした費用に24億5千万円の起債を活用し、年度末の起債残高は約156億5千万円となっています。決算委員会の審議の中ではバランスを考えて適切に財政運営を行っていくとの答弁がありましたが、区民への丁寧な説明が必要です。基金残高は増加し、将来への備えは進んでいると思いますが、どのぐらいの規模が適切なのか、あるいは、起債残高が増加しているのは将来への負担が重くなるのではなどの疑問は私だけではないと思います。今後の基金と起債の活用について区長のお考えをお聞かせください。

中長期的視野に立った財政運営について

次に中長期的視野に立った財政運営についてお伺いいたします。本区の財政構造は、経常収支比率が84.5%で23区と比較すると23位です。この傾向は従来からで、このところ少し改善してきてはいますが、義務的経費である生活保護や子育て支援などの扶助費の割合が高く、23区の比較では区民一人当たりの歳出額が49万2千円で第4位ですが、そのうち扶助費は17万5千円で第1位となります。区民福祉に必要な経費でありますが、財政の硬直化につながり、柔軟な財政運営が困難になる懸念があります。これからの社会情勢の変化は高齢化の進展、少子化対策、グローバル化、IOT・ICT・AI化対応・街の再整備、共生社会の推進など新たな行政需要にも積極的に対応していかなくてはなりません。区民サービスの維持・向上を図っていくため、中長期的視野に立ちどのように財政運営を行っていくのか、区長のご所見をお聞かせください。

2. 台風などによる休校やイベントの中止情報の発信について

台風などによる小中学校の休校や学校行事の中止決定について

 先日の台風19号は各地に甚大な被害を及ぼし、改めて水害の恐ろしさを痛感致しました。台風19号は発生からその後の規模・進路などの情報が気象庁から随時マスコミを通じて提供されました。かなり大きいこと、進路が関東地方に向かうことなどの警戒情報を踏まえ、JR東日本の深澤社長は8日に計画運休を考えるとマスコミに伝え、鉄道各社、航空各社も計画運休を11日に公表しました。社会の混乱を避け、不測の事態を回避する為の方法として、前回の計画運休の反省も踏まえ余裕を持った決定がなされたと思います。商業施設やその他の集客施設も相次いて休業を決めました。今日の気象情報の的確性や安全性への配慮からこうした対応をとる時代なのだと感じます。今後、台風や雨で休校や行事の中止決定をするにあたり、あらかじめ中止決定の時期について基本的な考え方を決めておくべきと考えますが如何でしょうか?今回の例を参考に当日の朝ではなく、早目の決定と、各学校に任せるだけではなく、教育委員会の判断や情報発信が必要と考えます。教育長のご所見をお聞かせください。

台風や雨による区内のイベントや行事の中止決定と発信について

 台東区では様々なイベントや行事が行われます台風や雨で中止にせざるを得ない場合もあります。気象情報の的確性に鑑み、中止決定の時期や情報発信の基本的方針を予め決めて置くことにより、安全性の確保や、混乱の回避、費用の削減などの効果を図れます。実行委員会が実施しているイベントについても、区の基本方針に沿って協議することが出来、決定がスムーズになると考えます。区長のお考えをお聞かせください。

3. 不登校児童生徒に対する教育機会の確保対策について

 昨年公表された、文部科学省の平成29年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果によると、小・中学校における不登校児童生徒は144031人で、平成25年度以降小学校・中学校共に増加し続け、平成10年度以降過去最多となっています。しかも約6割の不登校児童生徒が90日以上欠席しているなど、憂慮すべき状況にあります。平成28年12月には、不登校児童生徒への支援について初めて体系的に定めた「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立、平成29年2月より施行され、同年3月、同法に基づく基本指針を策定しました。この中で「学校や教育委員会等は、魅力あるより良い学校づくりや児童生徒の学習状況等に応じた指導・配慮を実施すること。また、児童生徒の社会的自立を目指して、組織的・計画的な支援や民間の団体との連携による支援を実施するほか、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、関係機関との連携による教育相談体制を充実するなど、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援を推進すること。なお、不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮し、支援に当たっては、不登校児童生徒の意思を十分に尊重しつつ行うこと」としています。しかしながら平成30年度の調査で、法や基本指針の内容が教員に十分に周知されておらず、基本方針に基づく対応がなされていないことも分かりました。不登校の問題は長年にわたる課題でありながら、ようやく体系的な取り組みが始まりました。ICTを活用した学習機会の提供や、訪問型支援を含む教育センター機能の強化、学校以外の場における学習活動を行う団体施設への財政支援などの具体的検討が進められています。

 台東区における不登校児童・生徒は、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの1年間に、連続、または断続して30日以上欠席し、不登校の状態にある児童・生徒のことを言います。小学校では36名で、昨年度より11名増加、中学校では。113名で、昨年度より6名減少しています。このうち特に配慮を要する90日以上不登校の状態にある児童生徒は、小学校16名、中学校88名となっています。現在小学校・中学校とも不登校ぎみの児童・生徒や保護者との面談を繰り返し、スクールカウンセラーやあしたば学級につなげていく取り組みを進め、学校を休んだ家庭には電話連絡や定期的に家庭訪問を行うなど、努力して頂いていることは承知しています。スクールソーシャルワーカーが2名配置され福祉や医療との連携もすすめられています。さらに「教育の機会確保に関する法律」の趣旨にあるように、一人一人に即した自立への支援と教育の機会の確保が求められています。本区でも「あしたば学級」以外にも組織的支援と居場所や教育の機会の確保に向けた具体的方策を講じるべきと考えます。教育長のご所見をお聞かせください。

4. 認知症の早期発見と理解の促進による地域社会の構築について

 日本において平成 24年で認知症の人の数は約 462 万人、軽度認知障害の人の数は約 400 万人と推計され、合わせると 65 歳以上高齢者の約4人に1人が認知症又はその予備軍とも言われています。平成 30年には認知症の人の数は 500 万人を超え、65 歳以上高齢者の約7人に1人が認知症と見込まれています。高齢化が進む今日では、認知症はだれもがなりうるし、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、 身近なものとなっています。認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる地域社会を目指さなければなりません。そのため、本区において、認知症に関する正しい知識と理解を持って、地域や職域で認知症の人や家族 を手助けする認知症サポーター の養成を進め、認知症の人と関わる機会が多い小売業・金融機関等の従業員等向けの養成講座を開催、学校教育等における認知症の人などを含む、高齢者への理解の促進を図ってきました。認知症地域支援推進員を配置し、医療・介護専門職による認知症初期集中支援チームも配置しています。永寿総合病院は平成27年9月1日より東京都の指定を受け、 認知症疾患医療センター(地域連携型)を設置しています。認知症の専門医相談、鑑別診断、身体合併症 と行動・心理症状への対応、地域連携の推進、認知症 に関する普及・啓発活動等を実施しています。このように様々な仕組みが作られてきています。しかしながら高齢者自身が「認知症になりたくない」家族も認めたくない気持ちが強く、認知症の早期発見、早期受診に繋がりにくい状況にあるように思います。かかりつけ医であっても、患者本人が診断を言い出さない段階で、認知症と疑いながらも言いにくい空気があります。後期高齢者医療制度の健診は、令和2年度からフレイルなど高齢者の特性を把握するための、新たな質問票を策定し実施すると聞いています。健診は大切な機会ですので、認知症の初期発見のため既存のチェックリストを健診通知に同封して配布し、健康診断時に活用しては如何でしょうか?誰もが平等に同じようにチェックするのですから抵抗感は少ないとおもいます。早期発見により、早期対応 (二次予防)、重症化予防、機能維持、行動・心理症状の予防効果が期待できます。医療と介護の連携は益々進んでいきますので、先ずは、かかりつけ医の適切なアドバイスを受けることは重要と考えます。さらに認知症になってもこれまで通り安心して暮らせる地域社会、共生社会を実現していく事が大切です。そのためには認知症に対する正しい理解と、周りの人の温かい接し方や、見守りが必要です。本区ではすでに多くの方が認知症サポーターとして認定され、努力されていることは評価いたします。さらに増やす計画になっていますが、活用に課題があると思います。誰もが生きやすい共生社会実現に向けた取り組みを進めるにあたり、認知症サポーターをどのように活用していくのか区長のお考えをお聞かせください。

 以上で私の総括質問を終了いたします。ありがとうございました。