平成30年第3回定例会 総括質問

平成30年第3回定例会 総括質問

平成29年度決算審査特別委員会 総括質問

平成30年10月19日(金)

 おはようございます。自由民主党の高森喜美子でございます。平成、最後となります決算審査特別委員会、総括質問のトップバッターを務めさせていただきます。自由民主党は東京都台東区一般会計、東京都台東区国民健康保険事業会計、東京都台東区後期高齢者医療会計、東京都台東区介護保険会計、東京都台東区老人保健施設会計、東京都台東区病院施設会計の歳入・歳出決算について認定いたします。
 委員会における各委員の意見を十分に考慮し、行政に反映することをお願い申し上げ、総合的視点から区長に総括質問をさせていただきます。

1. 税収について

ふるさと納税の影響と行政事業支出の説明について

 平成29年度は区政施行70周年の節目の年でした。東京の中心区である台東区の歴史の中でも戦後の苦しい時から、今日までの道のりは、その時々の努力の結果で先人の功績を忘れてはなりません。経済成長を実現した昭和から、地方分権を進めた平成、そして今日、高齢社会・少子化が進み、日本全体の人口減少局面差し掛かってきました。ことに地方の危機感が大きくなると、東京一極集中に歯止めが掛からないと白羽の矢が向けられ、地方税である法人住民税法人割を一部国税化で特別区は628億円減収、さらに来年度以降拡大の方向が示されています。また、30年度税制改正において、地方消費税清算基準の見直しで、特別区の減収は380億円となり、消費税の趣旨である「税収を最終消費地に帰属させる」基準からはずれています。そして、ふるさと納税についても30年度は特別区民税の減収は312億円となる見込みで、4年前のスタート時の34倍にもなります。豪華すぎる返礼品がふるさと納税の獲得競争に拍車を掛け、趣旨から逸脱していると総務省も問題視して話題になりました。地域間の税収格差は国税により地方交付税として調整されてきましたので、これらの特別区の税収に関わる国の動きは、先人たちが築いてきた地方分権や地方税制の基本原則を歪めるものであり、日本経済を先頭切って支えてきた東京の人と企業の努力を軽視するものであると憤りを感じます。本区におけるふるさと納税の影響は29年度特別区民税3億7523万円程の減収で25年度と比べると43倍にもなります。納税により品物が貰えることはこれまでに前例がなく、義務として払っていたのに、米や牛肉、カニなど、返礼品を選ぶことが出来て送って貰え、納税も出来るのであれば、返礼品分はタダで貰えたような感じがし、得した気分になることは間違いありません。ふるさと納税した方は、返礼品分を得して、普通に特別区民税として納税した方々の税金で同じように行政サービス受ける訳ですから、公平性の観点から問題ですし、減収による行政サービスの低下も起しかねません。23区の中にはふるさと納税を始たり、ガバメントクラウドハファンディングによる事業など、新たな収入確保策を導入している所もありますが、区長は税収への影響をどのように感じ、対策をお考えでしょうかお聞かせ下さい。 

税収の増加と積極的施策の展開について

 一方で、どこの自治体へでもふるさと納税できる現状を考えると、税に対する区民の認識を喚起し、収めた税金がどのような行政サービスに活かされ、どのように生活の中に還元されているのか区民に知って頂くことが大切になってくると考えます。予算書・決算書・行政コスト一覧表・事務事業評価などすべて公表していますが、区民の心にどれ程届いているでしょうか?利用する施設や、サービスの事業ごとに係る経費についても明確化し、表示して納税者である区民の理解と、税の大切さを再認識して頂けるように努力する必要があると考えますが、区長のご見解お聞かせ下さい。 

 服部区長就任以来、国立西洋美術館世界遺産登録の成功や朝鮮通信使のユネスコ世界の記憶への登録など世界的に認められる結果がでました。服部区長が進めた産業フェアーや海外への販路拡大、観光バスの予約システムの導入、小中学校への体育館のエアコン設置、区有施設のLED化の加速化、情報システムのクラウド化、妊娠から出産・子育ての切れ目のない支援と産後ケアーの導入、など将来につながる事業の展開を評価いたします。さらに安倍政権誕生以来、景気は順調に回復し、本区においても人口が増加しふるさと納税の影響以上に納税者の増加と景気回復の効果が大きく、順調な財政状況となっています。この時期たからこそ将来への投資として積極的施策の展開も必要と考えます。区長はこの先どのような仕事を意欲的に進めたいのか具体的施策があればお考えをお聞かせください。

2. 水害対策の強化について

水害対策の強化について伺います。

区役所の水害対策の強化について

 今年は夏の猛暑や地震、豪雨・台風など自然災害に見舞われ大きな被害の爪痕を各地に残しました。東京は幸いなことに大きな災害は避けられていますが、各地の状況は思いもかけない、想定外の事態が発生することを認識させ、大きな教訓を示していると思います。

 大阪北部を震源とする6月18日午前7時58分に発生したマグニチュード6.1 最大震度6弱の地震では、大阪高槻市立の小学校のブロック塀が倒れて児童が犠牲になった痛ましい事故に、衝撃を受けました。一見丈夫そうなブロック塀は地震の揺れで、ブロック部分が約40mに渡り道路側に倒れました。実は建築基準法に違反する構造で、老朽化もあったのですが普段は、だれも気付かず盲点でした。その後全国の通学路のブロック塀を総点検するよう、国は全国に通達し安全の確保が進められました。本区でもブロック塀の点検と改修が進んでいます。

 7月の西日本豪雨は活発化した梅雨前線が停滞し、記録的大雨による被害を各地に及ぼしました。岡山県倉敷市では堤防が決壊して広範囲で家屋が水につかり、九州・中国・近畿・四国地方でも土砂崩れや河川の氾濫が相次ぎ死者200人を超える最悪の豪雨災害となってしまいました。この時の雨の降り方はこれまでの経験を超える降雨量で、ダムの水が満水となり、放流を余儀なくされたことも下流の被害に繋がったのではと批判されました。このような事態が東京で起こらない保証はありません。豪雨による被害の予想はハザードマップが作成され、荒川決壊時の浸水予測も公表されています。しかしながら区役所の水害に対する備えは、震災対策・防火対策が進んでいるのと比較して遅れていると感じています。区民の生命・財産を守る自治体として、災害対策本部の備品の充実や本庁舎を始めとする区有施設の水害対策について見直し、強化すべきと考えますが、区長のご所見をお伺いいたします。 また、都市部における地下の利用は進んで来ており、公共交通機関、地下通路、地下駐車場。地下商店街、地下飲食店、など広さや利用の仕方は様々であり所有者の責任で管理する事となっていますが、水害時の危険性の認識は不十分で、地下所有者・管理者への啓発や、利用者への安全確保の啓発が必要と思います。区長のご所見をお伺いいたします。

地下施設の水害危険性の啓発と消防団の水害装備の充実について

 また、消防団は台風や大雨が降る状況の中、水防非常配備態勢が発令されると分団小屋に参集し待機しています。地元の状況を常に把握している消防団であり、災害時の対応のリーダーでもありますが、水害時の装備は十分とは言えません。装備の充実を東京都に要請すべき思いますが区長のお考えをお聞かせ下さい。

3. 若者支援について

問題を抱える若者支援の充実と分かりやすい相談窓口の設置について

 平成30年度の文部科学省が公表した未就学から大学卒業後の進路までを追った「学校基本調査」によると中学校から高等学校等への進学率は98.8%で29年度と同じ数字で、高等学校等就学支援金が支給されるようになり、家庭の経済状況に関わらず高校進学の機会が得られるようになりました。しかしながら、文部科学省の調査によれば平成27年の高校中退者は49263人(1.4%)。不登校者は43563人(1.5%)です。全日制高校では、出席日数が足りず単位が取得できなければ留年や退学となるため、退学者の中には不登校者が多く含まれていると考えられます。中退後の進路は、働いている56%,在学中31%,求職中14%,と続き、働き方としては、フリーター、アルバイトが76%で正社員は17%、家業・事業6%の順になっています。退学後に再び学業に進んだ31%では通信制高校が50%、全日制・定時制高校33%,大学11%と続いています。いずれの場合でも社会的に不安定な要素が多く、経験や社会の仕組みについての知識も少ない中で、相談する相手が分からなく困ることが多いそうです。中には、引きこもりや、家庭内暴力、非行など問題が複雑化、長期化し家族もどうして良いかわからない状況に陥るケースもある程です。台東区における若者の支援体制は緒に就いたばかりですが、極めて大事な事業と評価いたします。若い時の躓きは支援次第で立ち直りも早く、適応性もあり軌道修正し易いと言われています。子育て支援では妊娠期からの切れ目のない支援が実現しています。今後は中学校卒業以降も必要な方には切れ目のない支援体制の充実と、分かりやすい相談窓口を設置すべきと考えます。区長のお考えをお聞かせ下さい。

就労支援施策の充実と周知について

 また区の就労支援事業への利用者は少ない状態です。高校卒業・中退者のみならず、大学卒業後、進学も就職もしていない人の割合は7%約39000人いることを考えると必要性を感じます。行政サービスを最も受けない世代でもあり、若者からの関心も低いことは予想されます。職探しはインターネットでも出来る時代ですが、地に足のついた就職活動となるためには基本的知識も必要です。若い人たちのニーズも考慮に入れ、必要な情報が届くよう周知の在り方にも工夫をして頂きたいと存じます。区長のお考えをお聞かせ下さい。

人手不足の企業と若者の就労支援の強化とマッチングについて

 また、 2019年4月1日からは働き方改革関連法が順次施行されます。時間外労働の上限規制が導入され、人手を増やす必要に迫られる企業も出てくると考えられます。正規雇用と非正規雇用の労働者間の不合理な待遇格差は禁止されます。大学生の就職活動の規制をなくしたい動きもあり、中小企業にとっては、人材の確保は業績に関わる大きな事態と深刻に受け止めている所もあるようです。人手不足の区内中小企業と働きたい若者をマッチングさせる機会の充実が必要です。また、特に就業に困難を感じる若者に対しては、継続した支援を行いながら就業に繋げる対策を講じていくべきと感えます。区長のご所見をお聞かせください。

4. 多様性を認め合う社会の実現について

 男女差別、外国人差別、障害者差別のない社会を実現する為に法が整備され、機運が醸成されてきました。基本的人権は民主主義の根幹であり、日本国憲法の柱の一つです。基本的人権とは「人間が人間である以上、人間として当然持っている権利」と辞書に記されています。自由権、生存権などの社会権、参政権、受益権などが明記され、法的整備もされている所です。しかしながら、社会生活におけるお互いの人権の尊重について、どのように理解されているのでしょうか?私は教育学の教授から次の様にお話しいただいた事が印象に残っています、「自分は世界でただ一人の大切な存在である。同じように隣の人も世界でただ一人の大切な存在なのだ。」と。人は姿形、考え方、感じ方、時代や自然を含む生活環境など違いがありその違いを認め合う事こそ社会生活の大前提になると思います。そして残念ながら100%完璧な人はいないので、お互いが助け合う関係を作っていかなくては間違いが起こりやすいと思うのです。今年、スポーツ界で起きたパワハラ問題、アメリカのセクハラ被害を訴えた「me to運動」、LGBT当事者の訴えなど、今日の社会においても多様性を認め合う事への認識は、立場の如何を問わず深めていかなければならないと感じます。本区では、私たち女性議員が中心となり全会派のご理解の元、東京都台東区男女平等推進基本条例策定に向けて議論を重ね、平成26年全議員が提案者となり第4回定例会で可決、平成27年1月1日に施行しています。先日、東京都において「性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いの禁止」について定めた条例が可決されたと聞きましたが、私たちはすでに台東区男女平等推進基本条例の策定過程で議論済みです。第7条の中に性別(性自認及び性的指向を含む)に起因する差別的な取り扱いその他の性別に起因する人権侵害を行ってはならない。と定めています。本区の条例が施行されてから3年以上が経過しており、条例の理念である「誰もが、自分らしく生きていける社会」を実現するために、具体的な取り組みという「形」にしていく時期に来ています。5月には「男女平等に関する台東区民意識調査」を実施されていますので、結果を基に計画的かつ具体的に取り組む必要があると考えますが、区長のお考えをお聞かせください。

 ありがとうございました。これで私の総括質問をおわります。