平成24年第2回定例会 一般質問
平成24年第2回定例会 一般質問
平成24年 台東区議会第2回定例会 一般質問
6月11日 高森喜美子
自由民主党・無所属の会の高森喜美子でございます。
お許しを頂きまして、通告の順に従い一般質問をさせて頂きます。
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先日、区長は第2回定例会の開会冒頭の所信表明の中で災害対策に触れられていました。内容は要約すると「東京都が新たな被害想定を発表したものを受け、地域防災計画の修正を行っている。秋ごろに素案を示したい。東京都の地域防災計画を踏まえ、各方面の意見を反映し実行性を高めていく。より機動性のある災害対策の枠組みをつくる。」と言うものでした。
「機動性のある災害対策の枠組み」と言う所に台東区としての独自性と区長の思いが、感じられたところです。
計画の中身の議論と同時に、すでに東日本大震災を契機に区民も企業も各組織も取り組みを開始しています。ことに4月18日に東京都の公表した災害想定は、震源の深さがフィリピン海プレートで10km浅くなっているとの知見を基に、震度7を想定し、震度6強の範囲が広がるというものでした。
東京区部の木造密集地域の家屋の倒壊、火災による延焼の危険がさらに増し対策の緊急性が指摘されています。
東京都は今年1月「木造密集地域不燃化10年プロジェクト」を示し、特区を指定し重点的に整備の促進を図ろうとしています。都の条例に基づき、地域危険度調査が5年ごとに行われており、これまでの調査の結果、危険度が高い整備地域が指定され、この中に台東区では谷中と浅草北部の2つの地域が入っています。特区の指定は、区が整備プログラムの案を作成・提案し都が認定する仕組みとなっています。
今年度は試行段階で提案のあった区の中から3区を指定すると聞いています。本格実施の来年度も見据え、早急に木造密集地域の安全確保に向けた取り組みを提案して、特区の認定を受け、都の支援を受け一体となった推進体制を作って頂きたいと思います。ことに谷中地区センターの整備は、区役所が被災した時のサブ防災本部と位置づけていることから、
地域の道路拡幅や不燃化は大変重要な課題であると考えます。危険と判定された地域の住民に働きかけ、進みにくい整備を大きく前進させる機会として特区を活用すべきと考えます。区長の木造密集地域への考え方をお示しください。
2初期消火対策
東日本大震災では津波が想定を超え、甚大な被害をもたらしました。この度の東京都が示す区部における被害想定は、7割が木造家屋の倒壊や火災によるものとされています。
思い出すのは阪神淡路大震災であります。倒壊を免れた家も延焼により消失してしまう、火事の恐ろしさです。いかに火を出さないようにするか、初期消火の仕組みを徹底するのか、今からの備えが重要です。
最近では消防法の改正と機材の開発によりスプリンクラーが個人の住宅に、これまでより簡単に設置できるようになりました。東京消防庁は、火災予防条例に基づき住宅用スプリンクラーの設置を推進しています。また、台所用に出火の感知から消火まで、自動で半径2mを消化する、住宅用自動消火装置もあります。簡単な工事で付けられ、台東区の補助率9割で高齢者の世帯に設置することが出来ます。大いに活用を促し、出火の際、思うように動くことのできない高齢者や障害者の世帯の安心に結び付けて頂きたいと思います。住宅用スプリンクラーや住宅自動消火装置をより普及するための区長のお考えをお示しください。
また神戸地域で町内の人々がバケツリレーで火を消し止め延焼を免れた例がありました。
正に地域の底力、日頃の連携の深さが想像できます。今では水道水が使えるときはスタンドパイプが威力を発揮しそうですし、D級ポンプも比較的簡単に操作でき、貯水地からの消火活動に力を発揮します。現在区の公共施設や学校を中心に、スタンドパイプ13セット、D級ポンプ10台が備えられています。ことに危険度の高い木造密集地域には、初期消火活動に住民が自信を持って取り組めるように、町会の防災団に配備するべきと考えます。
各会派からこれまでに質問されていますが、とにかく試験的に1か所でも2か所でも、受け入れて管理もできる防災団に置いてみてはいかがでしょうか?
その結果を検証し、来年度からの配備の参考に生かしていくことも出来るのではないでしょうか?
まずは住民の希望に応えて、区民とタックを組む強いメセージを発して頂きたいのです。区長のご認識をお示しください。
3東京都特定緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化について
首都直下型地震の発生確率が高くなっているといわれています。
発災後の首都機能を維持するための動脈ともいえる道路の耐震化は、東京全地域に関わる物資輸送の生命線を確保するための重要な政策です。
東京都は23年3月に「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」を制定しました。区内では昭和通り・江戸通り・蔵前橋通り、一部尾久橋通りを特定緊急輸送道路として指定しています。この沿道には耐震化を必要とする一定規模以上の建物が233棟あるとされています。
本年4月より条例で定める耐震診断の義務化が施行されています。
義務化ですので、耐震診断は全額、国と都の補助金を活用し建物所有者の負担はありません。台東区では該当する所有者へ個別に訪問し、沿道建物の耐震化への協力を要請したと聞いております。所有者の理解や協力態勢はいろいろであることは想像できます。
しかし、万が一の事態を考え、まずは無料となる耐震診断の協力を説くべきと考えます。また、耐震化工事や建て替えも、個人の建物への補助としては極めて補助率が高いので、これを好機と捉えて耐震化を実現するように、強力に進めて頂きたいと思います。現在の進捗状況と今後の取り組みについてお答えください。
二 家庭教育支援の推進について
先月の初め、大阪維新の会の大阪市議団が議員提案を予定していた「家庭教育支援条例案」に対して、「大阪自閉症協会」など大阪府内を中心に活動する13団体が、撤回を求めました。
条例案の中に「発達障害は愛情不足が原因」などの記述があり、「偏見を増幅する」として提案を止めるよう要望書を出したのです。
市議団は5月市議会での提案を見送ったと報じられました。条例案はたたき台として何処かの県の条例に(案)を付けて配布したようです。前文の中に「本県の未来を託す・・」の表現があり、内容の把握や表現について検討しないまま条例案とした稚拙さは否めません。このような形で話題となった家庭教育支援条例ではありますが、条例制定を目指す趣旨は、時期を得た重要な課題であると考えます。というのは、近年、都市化、核家族化、少子化、地域における地縁的つながりの希薄化、伝統的子育ての伝承の断絶、などにより家庭の教育力・育児力の低下が指摘され、子どもの育ちに問題がでているからです。
平成18年12月の教育基本法の改定で、家庭教育が新設され、保護者の責任や役割、国・地方公共団体の家庭教育支援を義務づけました。本区に置いても生涯学習推進プランに家庭教育支援を位置づけ、家庭の教育力の向上の取り組みを開始しています。
先日配布されました家庭教育の振興実施記録を見させていただきました。幼稚園15、こども園1、小学校19、中学校7の会場でPTAが中心となって「家庭教育学級」が開催されています。また乳幼児家庭教育学級は3つの公募団体により開催されています。
どの会場もテーマを考え、より生活の中で役立つような工夫もされ、充実した内容になっていると感じました。参加者の反応も役に立ったと答えている人がほとんどです。
ここからみえてくるものは、自分の子どもを持って初めて赤ちゃんを抱いた親が増えていて、大なり小なり子育てに不安があったり、思い込みや不確かな知識で子どもと接していたり、親の都合で子どもに夜更かしや、不規則な生活をさせているなどの状況です。
親として学習を通して初めて気づくことがあって、「勉強になった」、「役に立った」などの感想になっているようです。親自身が「親」として成長し、子供の成長を支える大人になろうとする気持ちや意欲を支援し、勉強の場を用意することは、今や行政の責務であると考えます。
親の認識を深めることで、発達障害の早期発見と早期支援を用意することが出来ます。虐待の未然防止にもつながると思います。
そこで本区においても家庭教育支援条例を制定し、さらなる取り組みに位置づけては如何でしょうか。現在の家庭教育学級の取り組みに役立つような、親の学習プログラム集のような冊子をつくり、家庭での話題や保護者の共通認識に役立てるようにしてはどうでしょうか?教育長のご見解をお示しください。
三 国立西洋美術館の世界遺産登録推進について
今年2月18日、上野の国立西洋美術館の講堂で、シンポジュームが開催されました。国立西洋美術館が主催し、「20世紀建築と世界遺産―シリアルノミネーションにおけるOUVの議論をめぐってー」と言う極めて専門性の高い議論であり、イコモスのメンバーがそれぞれの意見をテーマに沿って表明する形で行われました。昨年のフランス、ユネスコ本部で行われた世界遺産会議には、区長も参加されつぶさに会議の様子をご覧になられました。
イコモスの答申は「不記載」というものでしたが、世界遺産会議の委員はこれを覆し、「記載延期」との決議に至った訳です。正に今回のシンポジュームでの議論の中心である国境を越えたシリアルノミネーションの難しさと、20世紀建築における重要性を簡単に無視できないル・コルビュジェの重みを感じるのです。
この推薦は「ル・コルビュジェの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」という複数大陸にまたがるシリアルノミネーションであり、100年経過していない近代建築物という点でこれまでに例のない推薦です。
国立西洋美術館は「松方コレクション」という美術作品の返還を通じて、第2次世界大戦の日仏の国交回復、関係改善の象徴的建物であり、コルビュジェが設計した日本で唯一の作品です。作品の特徴は、それまでの西洋の伝統であった石やレンガによる重厚な建築と決別し、人間の生活を中心とした機能的で明晰なデザインを追求しました。鉄とコンクリート。ガラスを使い、柱によって床を支え、空間を自由に組み立てる様式により、高層の近代建築を推進しました。
今、私たちが暮らす建物の基本を作り上げた建築家だったのです。
日本でも前川國男、坂倉準三、吉阪隆正らを弟子として受け入れ、日本近代建築の発展に、大きな影響を与えたと言えます。
こうした意義は区民にも分りにくく、単一の建物の推薦のように見ただけですぐに納得できる訳ではありませんが、世界遺産登録されれば、むしろその意義を理解するのではないでしょうか。
自国の文化を大切にし、世界にアピールするフランスの姿勢には学ぶべきものがあります。翻って私達も本区の文化や伝統を重んじ、日本の文化を世界に発信する大切さをこの活動を通して感じたところです
区長は昨年の第2回定例会で、今後も登録をめざし登録推進活動を続けていくと表明されました。区長はこうした世界遺産登録推進活動にどのような意味を感じておられるか、改めてお聞かせください。
次に、4月下旬に、スイスのジュネーブで開催されたル・コルビュジェ建築遺産自治体協議会についてお伺いいたします。
この協議会は、ル・コルビュジェの建築遺産の保全と活用のための自治体間ネトワークの構築、情報共有を目的としていると聞いております。私はシリアルノミネーションであるこの推薦にとって重要な会議であると評価しております。資産を保有する自治体として会議に参加し、意見交換をすることは意義があると考えます。今回の参加理由と成果について区長のお考えをお聞かせください。
次に、登録を実現するためには、イコモスから勧告を受けた指摘事項を改善に向け努力しなくては成りません。
推薦書は専門家で構成された諮問機関が審査し、その評価結果が勧告ですので、次の推薦書の提出には、国立西洋美術館について個別に指摘された部分のへの対応が登録への近道となるわけです。
その内容は「建物東側周辺環境の保全についてさらに強化することが必要」とされております。つまり、JR上野駅公園口付近の環境や景観整備、上野公園内である建物東側、区道を含む周辺を世界遺産のバッハゾーンとしての環境にふさわしい整備を求めているものと考えます。この取り組みは時間を要する難しい課題ではありますが、民有地は含まれませんので公的組織同士で、具体的行動を起こさなければ理解を得られないと危惧いたしております。
公園口の現状は切符売り場・改札口と道路の間にスペースがないため人があふれるような事態となっています。当然JRにも問題意識はあると存じます。
私は、かねてより関係機関である、国・都・JR・区による協議の場を設け、話し合うよう提案いたしております。そこで、現在この課題について庁内および国・都・JRなどの関係機関との間でどのような取り組みを行っているのか?また解決に向けた区長の決意をお聞かせください。
四 JR高架下・アメ横商店街の耐震化について
JRは高架下の耐震化が済んでいない山手線などの高架下の耐震化を520億円の予算で進めることを公表しました。台東区内ではアメ横商店街の高架した部分が対象となると聞ています。アメ横の耐震化を進めることは多くの買い物客や・働いている従業員の安全性確保の上で重要な課題です。
プレス発表後、具体的な耐震化計画や期間・工事予定などJRより説明をどのように聞いていますか?
また、過去にも飲食店などに賃貸しているJR高架下の耐震化工事は各所で進められてきました。他区の事例を参考に取りくみを進めて頂きたと思いますが区長のお考えをお示しください。